無料相談時の成約率をアップさせる方法

お客様との面談

無料相談の成否は準備で9割決まる

無料相談をしても、なかなか受任にならない時ってないでしょうか? 私の事務所でもそうでした。調子のよい時は、相談イコール受任という流れがどんどん続くのですが、調子が悪くなると、時間ばかりとられて、受任にならない相談が多くなってきます。
無料相談というのは、無料で行うものです。ですが、無料だからといって、準備もせずに臨んではいけません。せっかくの時間と労力が無駄になってしまうからです。
この記事では、どのような準備をすれば成功につながるのか、まとめてみたいと思います。

お客様に用意してもらうもの

まず、お客様に手ぶらで来てもらってはいけません。手ぶらで来るお客様はひやかし、もしくはセカンドオピニオンを求める人です。そして、手ぶらで来る人は、今抱えている問題の整理すらできていませんので、相談時間が長引きます。何をどうしたいのか、把握するだけで30分以上かかることもあります。
これを避けるために、お客様には、ある程度準備してきてもらいましょう。許認可の相談であれば、
①何の許認可を取りたいのか、
②いつまでに取りたいのか、
③最低限の要件を満たしているのか 、
この3つを事前の電話かメールで確認しておきます。
そして、個人の許認可であれば履歴書、保有資格、法人の許認可であれば登記事項証明書と直近の決算書類のコピー。これくらいは持参してきてもらいましょう。あとは、その許認可ごとに、必要な書類があると思うので、比較的簡単に用意できる書類は、できるだけ持参してもらったほうが、相談がスムーズに進みます。

事務所側で用意しておくもの

事前確認で、何の相談か分かったら、①全体スケジュール感がわかるもの、②最低限必要な要件をまとめた書類、③料金表、④申込書、この4つは用意しておきましょう。また、お客様がお急ぎであれば、相談時に署名捺印してもらえるように、申請書類一式も用意しておきます。この段階では、白紙でも構いません。相談しながら記入していき、その場で署名捺印できれば、時間短縮にもなります。
私の開業当時の失敗談ですが、お客様は依頼する気まんまんで来所いただいたのに、私のほうは「今日は相談だけだろう」と勝手に思い込み、申請書類を用意していませんでした。もちろん、ダウンロードすればよいのですが、その場でダウンロードしていると時間もかかりますし、段取りが悪い印象を与えてしまいます。
お客様によっては、事務所に依頼する前提で無料相談を受けてくださる方も多いですから、事前にできるだけの準備はしておきましょう。

相談のアポイントは2択で示す

問い合わせがあったら、相談日時を2択で示すことです。3択でも構いません。要は、「相談に来ませんか?」ではなく、どちらの日時がよろしいですかと聞くのです。そうすると、相談に来ることが前提なので、自然な流れで、新規相談が決まります。
✖ 相談は無料ですので、ご都合のよい日時をお知らせください。
〇 下記日時があいております。どちらがご都合よろしいでしょうか?

法人向けの無料相談の場合、会社情報をくまなくチェックしておく

相手の会社のことを何も調べずに訪問するのは、行政書士として仕事をする以前に、社会人として失格です。今はほとんどの会社がウェブサイト(ホームページ)を持っていますので、事前にウェブサイトはチェックしておきましょう。大きな会社だと数千ページに上るかもしれないのですが、チェックすべきページは、会社概要、業務内容、社長や幹部役員の氏名、最新ニュースくらいでよいでしょう。会社概要のページでは、本社だけでなく、支社や海外支店の有無などもチェックしてください。
会社のウェブサイトがない場合、会社名で検索して、出てくる情報をくまなくチェックします。それでも出てこない場合は、紹介してくれた方に会社の主要事業や規模(従業員数)くらいは聞いておいたほうがよいでしょう。インターネットからの問い合わせの場合、初回相談のアポイントを取る際に、同様の内容をできるだけヒアリングしてください。

受任率を飛躍的に高める面談のコツとは

行政書士事務所の数が今ほど多くない10年前なら、事務所で相談=受任でした。そんな古き良き時代もありました。しかし、今では、複数の事務所に無料相談をしてから決めるという方が増えてきました。士業にも、営業力、クロージング力が求められる時代になってきたのです。
今回は、面談での受任率を上げるためのコツをお話しします。

無料相談でどこまで話す?

お客様としては、無料相談であっても、今抱えている問題に対する多少のアドバイスを求めています。しかし、事務所側としては、多少であっても、それが問題解決の根幹を成すアドバイスとなりうる場合、なかなかノウハウを出しづらいという事情もあります。行政書士は、知識やノウハウを売る仕事ですので、それらを無料相談で出してしまったら、仕事になりませんからね。特に、頭のよいお客様の場合、行政書士が言った少しのヒントから解決法を見つけることができる場合もあります。
無料相談でどこまで話すかは、非常に難しい問題です。事務所によっては、時間内であれば、ノウハウを惜しみなく話すというところもあります。また、逆に、事務所でできること、料金体系のみしか話さないというところもあります。
私も、今までいろいろな方法を試してきました。そして、今のやり方はこうです。

  1. まず、お客様のおかれている状況、何をしたいのかを明確にします。
  2. そして、そのお客様のニーズを当事務所で解決できるのかを判断します。
  3. 解決できると判断した場合、依頼の流れ、スケジュール感、費用を説明します。
    無料相談というのは、相談の場であるのですが、その場で解決策を話す場ではありません。お客様が当事務所に依頼するかどうか決めていただく場です。そのことをお客様にも伝えておく必要があります。そうしないと、聞きたいことだけ聞いて、「ありがとうございました」と言って帰っていく方が非常に多いからです。厚かましい人になると、その後、何度もメールや電話で聞いてきます。
    無料相談は諸刃の剣です。受任につながる大切な場ですが、本来業務の時間泥棒にもなります。無料相談の前は、心を整理して、なぜこの無料相談を行うのかをしっかり考えて臨みましょう。

話すのは、自分3割、お客様7割

これまでの私の経験から、自分が話すより、相手の方が話す時間を長くしたほうが、圧倒的に受任率が高いです。お客様自身に現状の課題を認識してもらい、その課題解決のためには、プロのサポートが必要だと判断してもらうのです。

行政書士側が一方的に話すと、どうしても営業っぽくなってしまいます。あるいは、ノウハウの提供だけに終わってしまう可能性があります。どんなに役立つ話であっても、ただ聞くだけではお客様も疲れます。最悪、お客様からは、「この人、自分のことが大好きなんだな。自己満足しているな」と思われる可能性すらあります。ですから、できるだけ、お客様に話をしてもらうように心がけましょう。目安としては、自分3割、お客様7割です。お客様が話す割合が高ければ高いほど受任率は高まります。

お客様には敬語で話す

お客様が自分よりかなり年下だったり、日本語があまり上手ではない外国人だったりすると、どうしても、砕けた話し方になりがちです。いわゆるタメ口です。ある程度、親しくなってくれば、問題ないとは思うのですが、まだそれほど親しくなっていない場合は、敬語で話しましょう。
先日、ある役所で、行政書士の先生に会いました。私はその方とお話ししたことはありません。おそらく60代、いや70代の先生かもしれません。その先生は、20代の若いお客様に対して、とても丁寧な言葉遣いをされていました。たとえば、こんな感じです。
先生:前はどんなお仕事をされていたんですか?
お客様:●●の仕事です。
先生:その仕事をしていたことを証明できる書類をお持ちですか?あるいは、取り寄せることができますか?
お客様:はい、取り寄せはできると思います。
先生:では、お手数ですが、取り寄せてから、私のところに持ってきていただけますか?
お客様:はい、わかりました。

私は、この会話を聞いて、少し反省しました。これまでの私だと、自分よりかなり年下の方の場合、丁寧に言うとしてもせいぜいこんな感じです。
・前はどんな仕事でした?
・その仕事をしていた証明ってあります?
・では、その書類をあとで持ってきてもらえますか?

こちらが、丁寧な言葉で話すと、お客様は自分のことを尊重してくれているという安心感を持てます。そして、その安心感が信頼につながります。
これは、役所との折衝時にも有利に働きます。許認可申請によっては、本人と行政書士と審査官が三者面談のようなことをする場合があります。その時、行政書士がお客様に対して、丁寧な言葉で話していると、審査官から見ても、きちんとした先生だなという印象になります。逆に、行政書士がお客様になれなれしい口調で話していると、あまり良い印象を持たれません。

お客様にとって無料相談のメリットは何か?

行政書士の相談方法には、面談相談、電話相談、メール相談などがあります。受任になる可能性としては、面談>電話>メールの順番になります。
私の感覚としては、メール相談だけで受任になることは、かなり確率が低いです。
やはり、実際に会っていないと、受任は難しいのかなと思って、無料相談のメリットは何か、改めて考えてみました。
まず、相手が誰か、どんな人なのか、目の前で確認できるので、お互いに安心して話すことができます。これは、相談者側、事務所側の双方にとって大きなメリットです。
相談に来る人にとっては、信頼できる先生なのか、事務所はきちんとしているのかなどを確認できるわけですね。たとえば、ホームページが充実していたとしても、実際に会ってみると、頼りなさそうな話し方で、事務所に活気がないなというようなことが分かるわけです。メールや電話だけでは、ここまで分かりません。相手のことが分からないから、自分のことも詳しく話しにくいのです。相手が目の前にいて、信頼できると思ったら、話せる情報があります。そういった一歩踏み込んだ情報こそが、本当に重要な情報だったりします。
言い換えるなら、メールや電話で話せる部分的な情報だけでは、最適なアドバイスができないことも多いです。結果として、一般的なアドバイスだけになりがちです。
一方、事務所側としても無料相談のメリットはあります。受任につながるというメリットもそうですし、不良案件を回避できるというメリットもあるわけです。不良案件とは、違法案件、高圧的な態度、何度説明しても理解度が低いなどです。こうしたことは、なかなかメール相談だけでは判断しにくいです。

成功率、成功可能性は聞かれるまで伝えない

許認可系の業務、特に難易度の高い業務では、事務所に依頼した時の許可率を聞かれることがあります。ある程度、その許認可に関する知識を仕入れてきているお客様の場合、必ず聞かれます。
ですが、その許認可に関して、あまりよく分かっていないお客様に対して、聞かれもしないのに、こちらから伝えてしまうと、余計な不安をあおったり、逆に安心して依頼するまでもないやと思われるリスクもあります。もちろん、100%許可になる業務などありませんので、そこはきちんと話すべきですが、わざわざ80%くらいですね~と話す必要もないわけです。
具体例で説明しますね。お客様が就労ビザを取りたいとします。お客様は、プロに依頼すればまあ大丈夫だろうと考えていたとします。この場合、許可率80%くらいですねと言うと、お客様は不安になります。「えっ、お金を払って頼んでも不許可になることがあるの?裁判みたいな感じ?」といった具合です。
逆のパターンもあります。お客様が、自分で手続きするのは難しいだろうなと考えていたとします。その状況で、80%許可と聞かされると、「80%あるなら自分でやってみようか。そうすればリスクもないし」と考える方もおられます。リテラシーの高いお客様ほど、つまり、事務所側にとってやりやすいお客様ほどその傾向にあります。
安易に許可率を話すのは考えたほうがよいかもしれませんね。

オンライン相談のメリット

面談相談のメリットは分かるけれども、物理的に事務所に行けない、会って話すことが難しいということはあると思います。こうした場合に役立つのが、オンライン相談です。ZOOMやスカイプを利用すれば、相手の顔を見ながら、相談することができます。ラインのテレビ電話でも同じことができますね。
ちなみに、ZOOMを使うと、動画を保存できます。後で何度も確認することができるので、便利ですね。


お客様にとっての、オンライン相談のメリットは、リラックスして相談できることです。事務所ではなく、自宅にいながら相談できるからです。
事務所側のメリットとしては、同業者のなりすまし相談、ひやかし相談を減らせるといったことでしょうか。相談する側としても、自分の顔を出すわけですので、いい加減な気持ちで相談することはできないからです。
こうした動画相談の場合は、有料相談にすることをお勧めします。相談者、つまりお客様にとっては、リスクが少なく、メリットの大きい相談方法なのですが、無料相談の場合、そこから受任につながる可能性は低いです。相談が終わり、「ありがとうございました。検討します。」と言われ、音信不通になる可能性が高いです。
ですから、スカイプ相談については、有料相談にしましょう。有料相談料を依頼時の着手金に充当すれば、本気のお客様は逃げません。

目の前にあることではなく、未来を話す

うちの事務所に依頼したら、どういう未来になるのか、お客様がイメージできるように、お客様の未来について具体的にイメージしてもらいましょう。ここで大事なのは、許可を取るという未来ではなく、許可を取った後の未来です。許可のメリットと言い換えてもよいかもしれません。許可のメリットについては、お客様も当然分かっていると思います。改めてそのメリット、許可後の未来を言葉で表すのです。
例えば、建設業許可の場合、許可後の未来はこんな感じです。大きな仕事を受注できるようになる、下請けからの解放、良い人材も集めやすい、取引先との力関係も変わってくる、といったところでしょうか。お客様の夢を言葉で具体化し、その夢を広げてあげるのです。
また、お客様は、許可を取るまで、導いてもらうことを望んでいます。自分から能動的に動ける人は、そもそも依頼しません。常に、事務所側でリーダーシップをとり、手続きを進めていきましょう。

事務所の売上を増やしたいという気持ちを一旦捨てる

無料相談には来てくれるのに、なかなか成約に至らないという時があります。
それが続くと、疲労感が半端ないですね。どんどん成約できる時もあれば、その逆もあります。悪い流れのときは、以下のことをやめるだけでも、効果があります。

事務所の売上を増やしたいという気持ちを一旦捨てる。

事務所の売上第一に考えていると、なんとしてでもこの案件を取りたいという気持ちが前面に出てしまいます。その気持ちはお客様にも伝わります。「この先生は、私達がほしい許認可よりも、事務所の売上が大事なんだ」と思われます。そう思われたら、成約にはつながりません。そうではなく、一旦売上のことは横に置きます。そして、どうすればこの許認可が取れるのかを真剣に考えます。その真剣さはお客様にも伝わります。許認可のプロである行政書士が真剣に考えている姿は、お客様に安心感を与えます。そして、この先生にお願いしようという行動に繋がるのです。

お客様が困っていることを明確にして、選択肢を示す

例えば、建設業許可を取りたいというお客様がいたとします。お客様は何に困っているのか明確にしてみましょう。そもそも、何をどうすればよいのか分からないのか、自分でもできそうだが時間がないのか、不明点だけアドバイスがほしいのか、など、お客様によって困りごとは異なります。
その困りごとに対して、解決策の選択肢を示してあげるのです。自分で調べて手続きしてみるのもよし、役所で聞きながらやるのもよし、もちろん依頼してもらってもよしといった感じで。この時、選択肢毎のメリット、デメリットをまとめた比較表を作っておくと、成約率がアップします。
ただし、注意点があります。自社の商品・サービスを買ってもらうように誘導するのはやめたほうがよいです。そうすると、お客様は逃げていきます。
あくまで、お客様が抱える問題点はこうで、解決策にはこういう選択肢がありますという感じて、お客様に選んでもらうのが一番です。

グレーな案件を断ることで、経営が安定する

ある司法書士が仕事を断った理由

私の知人の司法書士の先生は、銀行や不動産会社からの仕事を一切断っているそうです。理由はいろいろあるようですが、主な理由としては、

①特定クライアントに依存していると鞍替えされたときにリスクが高い、

②クライアントによっては事務所を下請け扱いすることがある。

②についてですが、私も最近同じような経験をしました。あるクライアントがエンドユーザーに電話をして私を紹介してくれた時、電話口で、明日にでも、行政書士の●●(●●先生でも●●さんでもない)が連絡しますからと話していました。まるで自分の部下のように。あと、電話での連絡がタメ口、指示口調になってきました。つまり、完全に下請扱いです。おそらく、そのクライアントもお客様から無理難題を言われて、ストレスが溜まっていたのでしょう。そのはけ口を、紹介先である私にぶつけたわけです。もうこうなってしまったら、ビジネスの関係は破綻していますね。そのクライアントとは縁を切りました。一時期は本当に親しくさせていただきましたし、関係を断絶させるには勇気がいりましたが、そのような関係で取引を続けていると、法律に基づいた判断や提案ができなくなる危険があると感じました。仕事を断るときは勇気が必要です。結構な大決断だと思います。2、3日、あるいはそれ以上、引きずるかもしれません。本当にあの決断でよかったのだろうかと。でも、1か月もたてば、その決断が正しかったことが分かりました。今では、あの時、取引を終わらせて良かったと思っています。

仕事を断ったら遺留された

仕事を断ると、「はい、そうですか。では別の先生に頼みます」と言われることは少ないです。ほとんどの場合、慰留されます。手を変え、品を変え、いろいろな言い方で慰留されます。

これは、私が開業当初の頃の話ですが、あるクライアントからの仕事を断りました。その仕事が違法すれすれの仕事だったからです。すると、あらゆる言い方で慰留されました。最初は、「先生のいうことは分かる、でもこういう考え方はできないだろうか」という感じで、柔和な説得モードでした。しかし、私が翻意しそうにないことがわかると、
「この考えを理解できない人は、この業界にいるべきではない」と私自身を否定してきました。唖然としました。人格否定されたような気になって、3時間ほど仕事もできない状態になりました。
でも、この記事を書きながら気づいたことがあります。その方は、なだめたり、すかしたりしていただけなんですね。つまり、私がなめられていたわけです。なだめたり、すかしたりすればグレーな案件でも引き受けるだろうと。開業したばかりの行政書士は、百戦錬磨の経営者から軽くみられることが多いので注意しましょう。

いつも依頼してくれるお客様との関係を維持するために

仕事を断ることも大事ですが、優良なお客様とは関係を維持していきたいですね。優良なお客様から切れないために、どうすればよいか、考えてみました。
①役立つ情報を知ったら、その情報をまとめてメールしてあげる。
②お客様と仲良くなる。
今まで、仕事だけの関係だったのなら、友だちになってみる。飲み会、忘年会に誘われたら、参加する。ある意味、通常の業務より優先させるべき。
③上級編。お客様企業の経営会議、営業会議に参加させてもらう。最初は、無報酬でもよい。その会議で、アイデアを出す。その場で出せなければ、考える。
とにかく、お客様への関与を多くする。接触回数が多いほど、親しさは増しますからね。

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